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物語を読み終えた僕は、ベッドに座ったまま窓の外を眺めた。
視線の先は、対面しているちょうど窓の真ん前、君の部屋に向けられている。
僕は手を掲げて君に「読んだよ」と合図した。
窓の向こうで、君の手の平がしなやかに動く。
『会いたい』
「僕も会いたい」
君に届くように、頭の上で大きなハートマークを作ってみせた。
それからいく日がたち。
僕は君の部屋に忍びんだ。
君はもう歩くことも起き上がることもできなくなっていた。
「ねえ…おねがい」
僕はうなづいて、君を縛り付けている全ての拘束を解き放した。
これで君は、尊厳という名の自由を手に入れるだろう。
それからベッドに忍び込んで、今にも折れそうなほど細くなった身体を抱き寄せた。
君は僕の胸の中で小刻みに息を繰り返す。まるで、クスクス笑っているみたいに。
「わたしの、ものがたり…どうだった?」
「最高。ただ1つ追加。初めて会った時、アレ一目惚れだった」
「そう、なの?」
「うん。会った瞬間、好きになってた」
「わたしも……、わたしもマサルに…」
……ルナは深い深い眠りについた。
僕はこのまま君のそばにいると誓う。
君の物語の通り、いつまでも。
《了》
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