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第一章
季節は夏。アブラゼミの鳴き声と地面を照りつける日光がジワジワと暑さを作り出す。
校舎の一角にある教室で、窓をあけた三角龍大は、カッターシャツの第一ボタンをあけてパタパタと小さな風を起こし、涼風を首元にあてて少しでも涼しくなろうとしていた。
彼の色素の薄い茶色の髪も、毛先がじっとりと元気がなさそうにうなだれている。いつもは明るい表情をつくる焦茶色の瞳も今は閉じられている。
「あっちいなー、ったくよお!」
「そうだねえ。もう七月だ。定期試験があるよ、龍大」
龍大の隣に座っている一元泉も、相槌をうちながら現実を教えるようにいった。
彼の栗皮色の髪が、開けられた窓の隙間から入ってくる風によりサラサラとゆらめいている。
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