プロローグ

6/7
前へ
/338ページ
次へ
私の記憶が正しければ、人間は文明の利器を駆使せずに空を飛ぶことは不可能だったはずだ。 じゃあなぜ、目の前のこの人は浮いているのか。 ここまで考えれば答えは自ずと導かれる。 けれど、私の中の本能的な部分では、気づいちゃいけない、気づいたら最後だと警報を鳴らし続けている。 「あれ?見えてないの?さっきの反応だと見えてると思ったんだけど。」 「ひゃあっ。」 「あ、やっぱり見えてる。」 あまりにも私がそいつを凝視したまま動かないからだろう。 全身黒ずくめの男はススッと空中を移動してこっちに近づいてきて、あろうことか私の顔を覗き込んできた。 おかげで私は変な声が出たわ。
/338ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加