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━━━━━土曜日の朝。
ミカは駅の改札前に立ち、これから訪れる人物を待っていた。
時計が後数分で10時半を差す時、自分の名前を呼ぶ少年の声が聞こえる。
そちらに視線を向けると、手を振りながら近づいてくる少年が一人。
「ミカ」
嬉しそうに名前を呼んだ少年が、ミカの前で立ち止まる。
「久しぶりだな。元気か?」
ニカッと笑う少年は本当に嬉しそうな顔をする。
毎月会ってるのに、大げさだなぁ。
そうは思っても、会えることを喜んでくれるのはやっぱり嬉しい。
声を掛けてきたのは、ミカがいた同じ施設で育つ少年『有馬都築』だった。名前で呼ばれることを嫌うため、苗字の有馬を変換し『ユウマ』と呼んでいる。
ミカより一つ年上で、今は高三だ。
「久しぶりだね、私は元気だよ。
ユウマは?」
見るからに元気だが、なんとなくで訊いてみる。
答えは見た通りだった。
「俺も元気にしてる」
「そう、よかった」
いつもなら、もうそろそろ姿を見せるはずなのに。
もう一人の来客の姿がなかなか見えないことにミカは不思議に思った。
キョロキョロと辺りを見回しながら尋ねる。
「…あれ?そういえば、南方先生は?一緒に来るはずだよね?」
まだ改札なのかと見回しても、それらしき人物は見つからない。
はぐれて、ユウマだけ先来たなんてことはないはずだし。
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