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プロローグ
気が付くと、水の上に私は立っていた。
動くと波紋がその水面上に広がる。
私の目の前には1匹の鹿が立っていた。
いや、鹿では無い。
よく見ると一角獣だ。
全身は陶器のように白く、凛々しくも神々しさを放つ1本の角。
その生き物は銀白色の輝きを放っていた。
これを人はユニコーンと呼ぶのだろう。
しかし、幼い少女にはまだ分からない。
「あなたは、だれ?」
私はその生き物に問いただす。
「私か。私は、『全て』であり、『宇宙』であり、『世界』でもある」
その生き物は喋った。
でも、その時の私は不思議に思わなかった。
私は、目の前の生き物が何を言っているのか全く分からなくて、じっとその生き物を見つめていた。
「まだ、幼子には分からぬか。しかし、再び『あれ』が来る。その為にそなたたちが必要なのだ」
その生き物は言う。
どこからその言葉を発しているのか全く分からない。
「3度目の『あれ』が。私は、それを止める義務がある。そなたたちはその脅威に立ち向かうだけの資質が十分あると私は視た。だから、そなたたちに助けて欲しい」
どういうこと? 何を言っているの?
「この世界を。人類を、私たちを。だから、そなたにこれを授ける」目の前のユニコーンは薄れて透明になっていく。
「待って。ちょっと待って」
「焦る必要は無い。必ずそなたたちと私は出逢う。それは、必然。運命。楽しみにしているぞ」
その生き物はそう言い残して目の前から消えていった。
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