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その時の神父の言葉にこんなものがある。
「あなた達は何色に染まりたいですか?」
これを新郎、新婦の2人はそれぞれ自分の考えを述べるのだが、2人の出した答えは一つだった。
「虹色です」
「それ、違うじゃん」と当時は思った。
普通は、情熱的になって欲しいから赤、静かに、知的な子に育って欲しいから青と答えるのが一般的なのだが??
この2人には常識など通用しなかったらしい。
あまりの意外な答えに結婚式場はちょっとした騒ぎになったものだ。
何故そう思うのか、という神父の問いに2人はこう答えたのだ。
「何色に染まるかは私達にも分かりません。未来のことですから。時には、黒い憎しみや怒りに染まることもあるでしょう。真っ青な深海の絶望に沈む時もあるでしょう。ですが、それでいいのです。それを体験すること自体は悪くは無いのです」
新婦は続ける。
「どの色にも染まる可能性はあるのです。様々な体験をして、本を読んで知識を得て、知見を広げ、自分の体と頭で試行錯誤をしたいと思います。それは、一生分からないかもしれませんが、追求すべきものなのです。私達の子供も同じです。この子達が何色に染まるかは分からない。でも、考え続ける子にはなって欲しいと思います。物事を探求し続ける子にはなって欲しいのです」
そう言い終えた時、結婚式場には異様な空気が流れたものだ。
なんとも言えない、へばりつくかのような空気が。
その後には何も無かったかのように式が進められたが・・・・・・
「ふ、あれは面白かったな」
自然に笑みが零こぼれる。
しかし、あの時の言葉を聞いてはっと気付かされた。
師とは、導く者でもあるが、迷う者でもあると。
弟子と共に人生や学問を迷い、探求し続ける。
それが師の役割であると。
2人に赤ちゃんが出来た時、
「私達にもしもの事があったら先生、宜しくお願いします」
「馬鹿言ってんじゃ無いよ。アンタ達親が生きて子供を育てないでどうするつもりなんだい」
「先生も知っているでしょ? 私のお腹にあるものを。それと、今この世界の裏で何が起ころうとしているのかを。この子達が危険に晒される可能性はとても高いわ。その時は、《魂移しトランスソウル》で追い出すしかない。そうなれば、私も夫も命はないでしょう。だから??」
弟子の時には一言も弱音や文句を言ったことがない子だったし、特に、才能もある子だった。
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