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師匠はぶつくさ言いながら部屋から出て行った。
「よし。早く行くよフレシア。早く下に降りるよ」
「うん」
荷物を持って階段を降りる。
下から楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
1階に降りると、師匠が二人の夫婦と話し込んでいた。
その夫婦の隣には娘のリンが座っていた。
この二人の夫婦は獣人で獣医のお仕事をしている。
妻の方は黒い猫耳で何とも可愛らしく、人なつっこい顔をしている。
対して、夫の方は狼に似た獣耳と顔つきをしており、体つきも筋肉質で服の上から見たら分かるくらいの筋肉を持っていた。
娘の方はと言うと、私達の一つ年下で、母親に似の愛らしい童顔をしており、体も153cmと小柄だ
しかし、性格は父親に似たらしく、一言言えばお転婆娘である。
「あら。やっと起きたのね。二人ともお寝坊さんね。いきなり貴方たちのお師匠が尋ねてきたからびっくりしちゃった。私達、王都に泊まるなんて聞いていなかったものだから」
「全く。あんた達姉妹は本当に何も変わらないねぇ。もう、怒りを通り過ぎて呆れるよ」
ハハハと三人は笑い合う。
卵と塩の香ばしいの匂いがする。
長方形の形をした机の上には二人分の卵焼きとご飯が置いてあった。
「ご飯だぁ!!」
私よりも先におねぇがご飯に食いついた。
おねぇに続いて私も椅子に座って焼きたてのご飯を食べる。
思えば、ローラー夫妻のご飯を食べるのはこれで最後。
味わって食べないと。
「もう、貴方たちは旅立つのね。貴方たちと会ったのがつい昨日のように思えるわ」
妻の方がリンゴの皮を剥きながら目を細めて言った。
「お師匠さんが貴方達を私達の所に連れてきて、『私ではこの子達を育てる事は出来ない。私は魔術師としては一流とされてきたが、親としては一流どころかその権利すら無い。だから、貴方たちにこの子達を育ててやって欲しい。大変御迷惑を掛けることは承知の上だ。でも、私はこの子達を見捨てることなど出来ない』って泣いて来たのよ。寒くて雨が強い日だったから良く覚えているわ」
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