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でも、1人の師としてはとても尊敬している。
森の中で薬草のことを教えて貰ったり、実戦形式で体術を学んだり、おねぇは医術を一生懸命学んでいるのをいつも隣で見ていた。
師匠は、結構おしゃべりで口煩い人だったけど、その厳しさは優しさなんだと最近気付いた。
師匠には技術や知識を。
ローラー夫妻と娘のリンには優しさと温かさ、家族の大切さなど『心』を貰った。
彼らがいなかったら私達はどうなっていただろうと思う。
「あの、今まで有難うございました」
食べ終わったお皿にフォークを置いて4人にお礼を言う。
「今まで育ててくれて有難うございました」
顔を上げて4人の顔を見る。
師匠は相変わらず澄ました顔をしている。
この人はいつも冷静だ。
ローラー夫人は、目を赤くしてハンカチを目に当てている。
夫の方は、腕を組んだまま目を閉じている。頑固な彼らしい。
娘のリンは、ボロボロと涙を流す。
机の上には小さな池が出来上がっていた。
「本当に、成長したよ貴方達は。師匠が貴方達を連れてきたのがつい昨日のように思えるわ。貴方達は私達夫婦の子のようなものよ。ねぇ、あなた」
夫人は、ハンカチで涙を拭き取りながら夫に話を振った。
「ああ。本当にそうだ。血こそ繋がっていないが、血の繋がりがあるからと言ってそれが『家族』だとは限らない。子供たちにとっての心の光であって欲しいと俺は思う」
彼は、台所からコーヒーを人数分取り出して置いてくれた。
「子はいつか親から離れる。いつまでも親に頼っていてはいけないからな。でもな、赤ちゃんや年少の頃に『親の温かさや温もり』、『自分を大切にしてくれる人がいる』ことを体験した子供はいつまでも心の拠り所がある。逃げ道があることは大切なことだ。それが存在するだけでいいんだ。その存在が親であり、家族なんだ。俺は少なくともそう思っている」
そう。
この人たちはいつもそうだった。
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