第1話 旅立ち―1

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師匠がこの空気を作り出す時は、大切なことを言う時だ。 「フクシア、あれは絶対に使うんじゃないよ。あんたは薬術師としては大人が顔負けするほど立派だが、まだ心は子供なんだ。数年後、大人になったら私の所に戻って来い。そうしたら、お前の中にある《それ》の使い方を教えてやる」 「分かっているわ」 「カミリア、あんたには《あれ》を制御する魔術を教えたな。ちゃんと覚えているか?」 「もちろんです」 「よし。それなら良い。もしも、フクシアの中にある《あれ》が暴走したら頼んだぞ。《あれ》を止められるのはお前しかいないんだからな」 「分かっています」 これで本当のお別れだ。 彼等に手を振って見せる。 「行ってらっしゃい。病気や怪我には気をつけるんだよ」 「はーい」 それ、 私達の専門分野なんだけどなぁ。 最後の最後にボケたローラー夫人の一言に私達2人は笑い合った。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 場所は変わり、ロジャース姉妹の師匠?? メルドラ・ドラグニルは自分の部屋で1枚の写真を見つめていた。 若き日の彼女の写真だ。 いや、今でも十分に若い容貌をしているが、これは魔法の効果だ。 実際は50歳だ。 本来なら、顔に皺が出来始めてもおかしくは無いのだが、彼女の顔はまるで、20代前半のように透明感のある艶色をしている。 「あの子達は行ってしまったよ」 写真の中にいるのは、真ん中にドラグニルとその両脇に2人の人物がいる。 1人は、ドラグニルの肩に手を回して笑っている。 金髪ロングストレートの青い瞳をした女性だ。 もう1人は、銀色の長い髪をした男性だ。 彼は、緊張をしているのか顔が硬直している。 2人共、真っ白な服を着ていた。 そう、これは2人の結婚式の時の写真だ。 女性の方は、ドレス。 男性の方はスーツを着ている。 この世界では珍しいことでは無い。 どんな色にも染まるように、純白の服を新郎新婦は着る決まりがあるのだ。
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