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師匠がこの空気を作り出す時は、大切なことを言う時だ。
「フクシア、あれは絶対に使うんじゃないよ。あんたは薬術師としては大人が顔負けするほど立派だが、まだ心は子供なんだ。数年後、大人になったら私の所に戻って来い。そうしたら、お前の中にある《それ》の使い方を教えてやる」
「分かっているわ」
「カミリア、あんたには《あれ》を制御する魔術を教えたな。ちゃんと覚えているか?」
「もちろんです」
「よし。それなら良い。もしも、フクシアの中にある《あれ》が暴走したら頼んだぞ。《あれ》を止められるのはお前しかいないんだからな」
「分かっています」
これで本当のお別れだ。
彼等に手を振って見せる。
「行ってらっしゃい。病気や怪我には気をつけるんだよ」
「はーい」
それ、 私達の専門分野なんだけどなぁ。
最後の最後にボケたローラー夫人の一言に私達2人は笑い合った。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
場所は変わり、ロジャース姉妹の師匠??
メルドラ・ドラグニルは自分の部屋で1枚の写真を見つめていた。
若き日の彼女の写真だ。
いや、今でも十分に若い容貌をしているが、これは魔法の効果だ。
実際は50歳だ。
本来なら、顔に皺が出来始めてもおかしくは無いのだが、彼女の顔はまるで、20代前半のように透明感のある艶色をしている。
「あの子達は行ってしまったよ」
写真の中にいるのは、真ん中にドラグニルとその両脇に2人の人物がいる。
1人は、ドラグニルの肩に手を回して笑っている。
金髪ロングストレートの青い瞳をした女性だ。
もう1人は、銀色の長い髪をした男性だ。
彼は、緊張をしているのか顔が硬直している。
2人共、真っ白な服を着ていた。
そう、これは2人の結婚式の時の写真だ。
女性の方は、ドレス。
男性の方はスーツを着ている。
この世界では珍しいことでは無い。
どんな色にも染まるように、純白の服を新郎新婦は着る決まりがあるのだ。
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