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「おれが言ったのは一般論だ。お前に関してはまぁ、脈がないわけではなかろう」
「気にかかる表現だな」
心配げに歪む眉を、鼻先で笑う。
「ともかく、お前が別格なのは事実だ。何せ、この亮様直々のご推薦なのだからな。感謝しろ」
意味ができているのかいないのか、返ってきたのは惚けたような眼差しだった。
「鈍い男だ。だからな、昨日おれが蓮に言ってやったのだ。月龍はお前に惚れているのだから考えてやれ、とな」
「それでは」
「昨日の今日だからな。すぐにあれの気持ちが動いたとは思わんが、少しは考えてみる気になったのは確か」
だろうな、とは続けられなかった。
駆け寄ってきた月龍に抱きすくめられる。勢いを支えきれず、臥牀に押し倒される格好になった。
亮の耳元で、囁きが聞こえた。
「感謝する。やはりお前は、無二の友だ」
普段の月龍からは到底考えられない言動だった。
単純なことだと呆れるも、感情を表すのが苦手な男が示す大げさな感謝に、悪い気はしない。
だが一方で、違う感慨も湧いた。人の気も知らないでいい気なものだ、と。
人の気とは――亮の気持ちが何処にあるのか、自分でもわからないくせに。
「わかったからやめろ。気色の悪い」
わき上がった疑問と月龍の体を押しのけて、亮はひっそりとため息を落とした。
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