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蓮の髪は茶色がかった、独特な色をしている。亮もそうだが、家系的に多いらしい。
他にいないわけではないが珍しいことに変わりはなく、亮に印象の似た姿に、血縁関係を疑ってみるのは難しい発想ではなかった。
要は、簡単なはずの推測すらできぬ程に、心を奪われていたということだろう。
邵様も訪ねていらっしゃるのなら、遠慮などせずに、こちらまでお連れ頂けばよかったと、蓮は悪戯に笑う。
惚とした眼差しで、それを眺める月龍を見るだけで、名も訊けずにうろたえていた姿を想像するのは、容易だった。
それ以来、いつ訪ねて来るかもわからぬ蓮を、亮の部屋で待つようになったのだからたまらない。
「一体いつまで偶然に頼る気だ」
蓮が十日と経たずに訪ねてくるのは確かだが、もちろん毎日ではない。短くても四、五日は開く。
なのに毎日、仕事が終わると同時にやって来ては、ため息ばかり吐いて待つ月龍を、よくも二ヶ月あまりも耐えてやったものだと、我ながら感心する。
「だが、偶然でなくてどうやって会えと言うのか」
憮然とした問い返しに、片膝をついた胡坐で頬を支え、冷たい流し目を送る。
「二人きりで会いたいと言えばよかろう」
「無理なことを言うな。できるはずがない」
「なんだ。断られては会い辛くなる、などと言うのではなかろうな」
先手を打った亮に、月龍は唇を一文字に噤む。思わず、頭を抱えた。
「忘れたのか、月龍。蓮もあと半年もすれば、十五になる。おれも二十二だ。互い以上に適切な相手がいなければ、結婚は免れんぞ」
王には亮の他に子はない。
本来ならば、王の娘を娶った別腹の男子が王位継承権を得るのだが、現在のところそれは叶わぬ状況にある。
王に一番近しい親戚の娘は、姪である蓮と嬋玉だ。
瑤姫によく似ていた嬋玉は、すでに王の手がつき、後宮にいる。残るは蓮のみだった。
周囲は、早く亮と蓮の婚姻を成立させたく思っているようだが、亮自身どうしても乗り気になれなくて、先延ばしにしている。
「そう、そのことだ」
月龍が渋面になる。
知らぬ者が見れば怯える程のものだが、慣れている亮は、何のことだと平然と受け止めた。
「お前達の話は、そもそも政略的な意味合いが濃い。もしおれと蓮様が、その、恋仲になったとしても、影響などないのではないか」
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