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何せ幼き頃の私は、王国を滅亡寸前まで追い詰めた危機をたちまち解決し、プロポーズの為に押し寄せてきた108人の王子様を振っては恨まれ振っては泣かれを繰り返したのですから。
はい、もちろん全てが妄想です。
平々凡々と生きてきましたよ、現実世界においては。
4歳かそこらから始まった妄想癖は、私の生活難度を遥かに押し上げ、それは上げっぱなしの状態で今に至ります。
「アリシア。ご飯を食べ終わったら、東の森で焚き木を集めてきて頂戴」
「あい! 東の森!」
「西の森の方は危ないから行くんじゃないぞ。最近、あの辺りで人さらいが出たそうだからな」
「西はダメ! 任せてください!」
「怖いわよねぇ。早く捕まらないかしら」
「一応、騎士団が巡回しているが… …良い知らせを聞いてないな」
アリシア流処世術。
頼まれごとは即答で、尚且つ気持ちの良い返事をする事。
ただでさえ厄介者の私は、こんな時くらいは優等生でなくてはなりません。
下手に反抗的になろうものなら、見捨てられてしまうかもしれませんから。
そんな悲壮な気持ちを笑顔の下に隠しつつ、東の森へと向かいました。
「さてと、東。東の方角って……ナイフを持つ方でしたっけ?」
常に意識が異世界に吹っ飛んでる私の学力なんて、それはもう酷いもんです。
世間さまでは知っていて当然の知識ですら、自分には怪しい事が多々あります。
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