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さぁ、哀れな肉塊となるが良い。
最後は血に塗れ、人としてのぬくもりを感じながら死に逝くのだ。
相手を見定め、振りかぶろうとした……その時だ。
「見つけたぞ、人さらいめ! もう逃がさないからな!」
「き、騎士団だとぉ!?」
「ここだ! お尋ね者がここに居るぞ!」
「畜生! このガキは囮だったのか!?」
私の背後から街の兵士ども、別名愚鈍な連中が姿を現した。
つまりは、自分の出番は最早無いという事だ。
後は、振り上げた剣を虚しく地に叩きつけるしかなかった。
やり場の無い怒りが胸中でトグロを巻く。
そんな私に向かって、愚図の1人が馴れ馴れしく声をかけてきた。
「お嬢ちゃん、大丈夫かい? どこか怪我をしてないかな?」
「うるさい。そんな無駄な気遣いをする余裕があるのなら、そのゴミどもを逃さぬよう腐心しろ」
「ああ、うん。何はともあれ元気そうだね。街まで送るから付いてきてよ」
「ふん。まぁ良いだろう。非礼なくエスコートしてみせよ」
「何だろう。普通の女の子のはずなのに、妙な迫力があるなぁ」
私はそれから手ぶらで街へと戻った。
道中で泣く泣く、エクスカリバーと別れを告げて。
はい、例の木の枝は置いてきました。
重たくて邪魔臭いし、焚き木にならないヤツだったんで。
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