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――矢藤健一さん、あなたの色です――
画面に出たのは、黒――
僕はスマホにも自分を見透かされているように思えて鼻で笑った。
このパレットが真っ白な人は、さぞかし清楚で上品な人なのだろう。できれば僕もグレーぐらいにはなりたいものだ。
屋上へ続くドアには鎖と大きな南京錠で、行けれなくなっていた。仕方なくそのドアにもたれて休み時間を過ごす。
人が来る気配もなく、使わない机や椅子が置いてある。僕はカビ臭いこの場所が一番落ち着いた。
「おい!」
突然耳をつん裂く声が聞こえた。誰も来ないと思い込んでいたことも相成って、肩をすくめるほどに驚いた。ゆっくりと、声のあった方を見るとミニスカートの女子が腰に手を当て、仁王立ちで数段下の階段から僕を見上げていた。栗毛色のロングヘアーに大きな目と白い肌、規格外のリボンが彼女の可愛いさをさらに引き立てた。
「か、川......野......さん?」
「は? 誰? てかなんで私の名前知ってんだよ」
「いや、同じ中学だったから」
「......だっけ? あー、それよりさっきの、聞いてた?」
「え?」
「だぁかぁらぁ! さっきのだよ! 私のパレットが白いっての!」
川野さんは別のクラスだったが、派手で人気があると僕達のクラスまで噂になっている程だ。僕なんかとは別次元に生きる人、そんな派手な彼女のパレットが真っ白だったとは意外だった。
「えっ、そうなんだ」
「は? 聞いてなかったの?」
「す、すみません」
「あちゃー」と、頭を抱える川野さんはしばらくして僕に近づくと、眉間にシワをよせ更に顔を近づけた。初めて女子がこんなに近くいる状況。自分鼓動が高鳴るのがわかる。
「絶対、誰にも言うんじゃねーぞ!」
「は、はい」
耳の側で言われると、僕のスマホが手から滑り落ちる。画面に表示されたのはパレットの画面だった。
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