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「強い。恐ろしく強い。だからこそ素性を知りたい」
「それほどまでに……。確かに気になる小鬼ですね。放っておけば、我々の目的の邪魔になるかもしれません」
カトーは、しかめ面でカップを飲み干した。
「ミツル、大急ぎで店の屋上に鳥かごを作ってくれ。小鬼を閉じ込めて、口を割らせてみよう」
「承知」
ミツルは飲み干したカップをカウンターに置くと、出入り口に向かった。マントの襟を正して外の様子を伺うと、王都では滅多に降らない雪が舞っていた。
ミツルはドアを押し開いた。するとミツルと入れ違いになるようにして、一匹の少女猫が店内に滑り込んできた。シャムの血統が色濃く出ている、スラリとした体つきの美少女だ。
ミツルが肩越しに振り返ると、カトーが満面の笑みで美少女を迎え入れていた。
驚くべきことに、師匠は揉み手をするようにして少女をカウンターへ誘っていた。先ほどまでミツルの前にいた渋い面構えの猫とは、同じ猫と思えないほどにやけている。
「少女嗜好……。悪い癖だ」
ミツルは呆れた口ぶりで呟いた。ミツルは、舞い落ちる雪と同じくらいに白い指先でマントの襟元を押さえると、スモッグで汚れて灰色に染まった街並みへと姿を消した。
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