ラプンツェルの長い髪

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 私たちは夜じゅう、くちづけをしていた。そしていつの間にか寝入ってしまい、綾目の腕のなかで目を覚ました。少し腫れあがったお互いのくちびるを見て私たちは笑った。綾目への依存心は、私のなかで愛情に変わりつつあることを私は確信する。  今日は陶芸をする予定で、私も綾目も支度を急いだ。手早く出かける用意をし終った綾目は、外に出るため化粧をしている私の手元をじっと見つめている。 「どうしたの?」 「夏実の髪を結ってみたい」  綾目は真面目に言うので、私は自分の髪を差し出した。そして綾目は私の髪をひとつに束ねて、目の粗い三つ編みを結う。 「綺麗な長い髪だね。本当にラプンツェルみたい」  そう言って綾目は私のうなじにくちづけた。でも私はそれだけでは足りない。振り返って、私は綾目のくちびるを貪る。弘文とのいざこざは、私と綾目との愛情に入り込む余地を与えない。私たちのキスには隙間がなく、ぴったりとしていた。私は綾目に魅入られている。綾目の優しさと誠実さに満ちた目に見つめられると、私は長く忘れていた温かい気持ちで胸がいっぱいになる。  結局、私たちは陶芸の体験に遅れてしまった。     
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