ラプンツェルの長い髪

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 二時間も満たない道程で、私は三本のビールを空けた。心地のよい酔いで少し家から離れただけなのに、私は最近、失っていた軽やかさを感じる。新幹線から降りると、秋晴れが広がっていた。  山に囲まれていたその温泉地に着き、爽やかな気分を感じていたのも束の間だった。この温泉街は夫婦連れが多い。私はスマートフォンを取り出し、温泉街の名前とある言葉をいれて検索してみると、私の勘は当たった。「子宝の湯」というものがあるらしい。こんなところでも妊娠という言葉から離れたかったのに。私は脱力し、また不快な匂いが身体を包みこむようだった。     
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