覗けば真っ白、

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覗けば真っ白、

 『まっしろ』と言う言葉の意味について考えてみた。  真っ白。真なる白。  素敵な言葉ではある。けど、ちょっと使い道に困る。  純粋な、真の白なんていったいどこにあると言うのだろう。 「うわぁっ、真っ白だな!」 「・・・そぉかな?」  当たり前のようにそこにあるものに異議を申し立てたくなるのはもう私の性だから。仕方がない。  それを受け入れてくれる彼がどれだけ大切な存在か。 「えー? 真っ白じゃんか」  彼が『まっしろ』と称したのは雪が降り積もった早朝の道路。  まだ誰も通った形跡のないそこに、自分の足跡を残すことは何となく征服感があって気持ちいい。  だけどそれも、真なる白とは違う。  光が影をつくりデコボコが灰色に染まっている今、それは真っ白どころか白ですらないように思う。 「真っ白じゃ、ないよ」  ちょっとムキになった言い方をしてしまった。  なぜだか知らないけどちょっとしたことが深く気になってしまう瞬間ってある。  今の私がまさにそれで、かれこれ三十分はこの題について真剣に考えてる私にとって、彼の言葉は不躾に聞こえた。 「なんで? 真っ白だろ~」 「ちなう。いろんな影が、ある。雑色はいっぱい・・・」 「俺には真っ白に見えるけどな~」  彼は雪に自分の存在を示すが如く足跡をつけながら私を見た。 「雪は真っ白、雲も真っ白~」  寝起きと幻想的景色が相まって妙なテンションになっている彼はニカッと笑った。 「きみの肌も真っ白だ」  カッと、頬に熱が集まるのを感じた。 「ん? あれ? 真っ白じゃなくなった」 「・・・うるさい・・・っ!」  ニッコリと笑みを深める彼の顔を見てふと思う。  真なる白はこんな所にあった。  覗いてみたら、すぐ気付ける。彼の心は真っ白に輝いていた。
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