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私たちは絵の具屋さんに辿りついた。
「ねえエデ、違うでしょ」
あまりにもスムーズに誘導されたから、どこで突っ込めばいいのかタイミングを失ってしまった。
白い絵の具のチューブを手にしていたエデはきょとんとして、それからもう少し大きめの白いペンキを手に取った。
「違うの! そうじゃないの!!」
ここは魔法学園の近くにある商店街の一角だ。美術科の学生向けに、画材やキャンパスを売っている。
「私は服を買いに行こうって言ってるの!」
エデはびっくりしたようにてれてれと頭をかき、私の背中をばしばしと叩き(全く痛くない)、それから照れたように両手でハートマークを作った。
「デートのつもりではないんだけど」
私がバッサリ切り捨てると、エデの作ったハートマークがぱきーんと割れた。心底がっかりしたように俯き、涙を拭いて、とぼとぼと歩き出す。
「何かお探しのものはありますか?」
タイミングが悪かった。画材屋さんの店員に捕まってしまった。
「学園の生徒さんでしょう? 美術魔法を使うなら、うちにお任せですよ。杖と絵筆がセットになったものもございます。それとも、魔力を溶かし込んだ絵の具がご入用ですか?」
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