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静かだった湖の水面がはためいた。風かと思ったら、どうやら違うらしい。足元から突き上げるような振動を感じる。水鳥のつがいは驚いて飛び去っていった。
地鳴りは大きくなり、湖はさざめきどころか波立ち始め、次の瞬間、大きな大きな水柱が立ちあがった! ばらばらと水滴が降り注ぐ。私は顔と首筋を覆った。冷たい!!
『私に何か用か、人の子よ』
湖から、巨大な白い龍が顔を出していた。私は呆然として龍を見つめた。近所に、こんなでっかい龍が住んでいるとは、初耳だ。
『お前か……』
龍はエデの顔を見ると、心底がっかりした顔をした。
「知り合いなの?」
私が尋ねると、エデはぶんぶんと顔を横に振る。
『例の、魔法学園の問題児だろう?噂は聞いている』
どうやら、人外の間でもエデは有名らしい。エデは誇らしいのか、手を腰に当てて胸を張ってドヤ顔をした。……誰も褒めていないと思う。
それから、エデは、ポケットからごそごそと『それ』を取り出した。白の祭で使う飾りだ。冬の精霊の姿を模した人形で、白い服を着ている女性の人形である。それをぐっと前に突き出す。
『冬の精霊について聞きたいのか?……ああ、そろそろ“白の祭”の時期だったな』
巨大な龍は呟く。
『冬の精霊は、訳あって、体調不良だ』
「精霊も、体調不良になるんですか」
私は思わず龍に尋ねてみた。
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