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4.来春
大雪の日の新幹線で知り合った九十九と栞は順調に交際を続け、出会ってから1年が過ぎた3月に結婚式を迎えていた。
新婦の栞はあの大雪の日が2月14日のバレンタインデーであったことに運命のようなものを感じているが、新郎の九十九は今日この日を迎えてもまだそのことにまったく気づいてもいない。
九十九は札幌からの栞の両親に改めて挨拶を済ませると、白無垢姿の栞に照れた表情で見とれていた。
彼にとって、白という色はやはりラッキーカラーであり、この先も続いていくのだろう。
すべてのことは考え方をひとつ変えるだけで見え方や感じ方が変わることがある。そうやって何かに不安ばかりを考えることなく明るく生きていくことさえできればそれで良いのかもしれない。
ラッキーカラーというたいした根拠のないことでも、それだけで人が前向きに生きていくことができるのだとすれば、役割としてはたいしたことを果たすことになる。
福引の抽選会のハズレの白い玉でもらったポケットティッシュを手にした時も、節分の豆まきで白い豆の他にも落花生があるという風習に感心した時も、大雪の中で栞がくれた牛乳を飲んだ時も、いつの時もポジティブに受け取ろうとする九十九の姿があった。
真っ白な栞の姿もまた彼に幸せを引き寄せるに違いないだろう。
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