2.節分

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2.節分

その年の2月3日の日曜日の夕方、九十九(つくも)は大学からの友人の家にやって来た。すっかりパパとなった友人の娘たちともすっかり仲良くなっている。 家に到着するやいなや早速、節分の鬼のお面をつけ、友人と二人、赤鬼と青鬼となって二人の娘たちから追いかけられる。このところ毎年の恒例となった光景である。 5才の長女に二つ下の次女が必死に遅れまいとおぼろげな足取りでついてまわる。そのうち次女はゴツンという音ともに扉に顔から飛び込んで大声をあげて泣き始めた。心配そうに鬼のお面を忘れて友人と九十九(つくも)が近寄ると次女の泣き声はさらに音量を増す。 母親が抱きかかえ、大事のないことを鬼の二人に伝えると二階へと逃げ込んでいた長女も心配そうに階段を降りてくる。 鬼のお面をはずし九十九(つくも)は鞄から福引抽選会でもらったポケットティッシュを母親に手渡した。母親の腕の中で少し落ち着き始めた次女の涙を拭い始めると次女は目新しいポケットティッシュという存在に興味を持ち始め、すっかりと泣き止んだ。 「さぁ、豆を拾って、お片付けをしましょう」 母親は長女にそう言うと次女をソファーに座らせた。次女の手にはしっかりと福引のポケットティッシュが握りしめられている。 床に散らばった豆を拾い集めながら九十九(つくも)は節分の豆もそう言えば白いということに改めて気づいた。 「北海道では節分の豆は殻のついた落花生なのよ」 母親は豆を拾い集めながら娘たちに話す。 殻付きの落花生なら鬼退治の後の回収も少しはラクに広い集めることができるだろうし、そのまま食べられるのでなんとも合理的な風習だなと九十九(つくも)は感心した。
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