沈む赤と影

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自分の席に座り静かに本を読んでいる。 これがいつもの日課。 「おはよーさん!」 「ああ、おはよう。」 本から顔を上げると友人の遊佐がニコニコと自分を見下ろしている。 「まーた本読んでるんか?今度は何や?」 真っ赤な髪に左側を上げてピンで留めているこいつは所謂イケイケ系だ。それとは反対に自分はどちらかというと悲観的な現実主義者で根暗な方、だと思う。 (あれ、自分で言ってて悲しくなってきた。) 「いや、普通に文庫本だよ。」 「ほー、さっすがやなぁ。」 遊佐は本当に関心した様子で腕を組みウンウン唸っている。これは自分が前有名な教授のレポートを読んでいたからこんな風に聞いてくるようになったのだ。 「そうでもないよ…」 そう言って自分は本に顔を戻した。遊佐がその時どんな顔をしていたかは見えなかった。
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