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白い、白い道を歩いていた
現実味がない、そんな世界
周りを見渡しても白一色しかないような場所を歩く自分がいた
自分の手や足も色がなく、なおさらリアルとは程遠い
「ーーー…?」
ふと、何かを感じて後ろを振り向いた
今まで何もなかった白に一人、人が立っていた
人…女の人は後ろに二対の翼を持っている
時折青白く光る髪は長く、風も吹いていないのに横になびいている
透き通った肌に赤みがさしている頬は人間味があると言うのに無機質な表情が人間だと言うことを否定している
ここまで考えて俺はなぜ、ここに居るのかを問いてみたくなった
わからないのだ、全て
なにもかも
「俺は…何?どうしてここに居る」
女の人はただ微笑んでいる、無機質な笑顔で
昔の服、布を一枚巻いただけのような薄い白布をはためかせながら
歩いてくる
俺はそれをぼーっと眺めていた
気づけばすでに目の前に彼女はいた
「お……いで…。どう…、…の……愛子を……って。…こお……した…でね…る……こを…」
彼女は囁く
俺にだけ聞こえる声で
いつの間にか周りには人がいる
ただ立っているだけの人形のような人が
ーーおねがいです。どうか、私の愛子を救って。…こおりのしたでねむるあのこを…
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