疑惑

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花菜の伸ばす腕の下からすいっと抱き上げてそのままぎゅっ。 俺はいつものシトラスの香りに包まれ……包まれ……。 ん? くんくん。 あれ?髪……。 「……どうしたの?直人。」 「え……いやその……」 もう一度、くんくん。 やっぱり髪の匂いがいつもと違う。 「花菜。あのさ……シャンプー変えた?」 「え?いいえ、っと……あーちょっと汗かいたからお店でシャワーしてきたの。」 ち、ちょっと! 今の今まで熱烈歓迎で俺にしがみついてたのに、パッと離れたよ、カナさん。 「ご、ごはん。そう、ごはん。あ、ごめん何にもない。食べに出る?」 「ご飯炊けてるならレトルトカレーあるよ。ゴーゴーゴーカレー買ってきた。」 「あ、ごめん、ご飯もない。」 「冷凍うどんは?」 「……食べちゃった。乾麺もないわ。」 申し訳なさそうに俺の顔見るけど。じゃあ俺が帰ってこなかったら今晩どうする気だったのさ。 ま、いい。今回は俺も連絡なしで帰ってきたから。 「ファミレスでいい?ラーメン屋でもいいけど。」 「うーん。ファミレス。」 「じゃとにかく着替えよう。」 明日も使うスーツだし。 何より寛ぎたいからね、カナさんといるんだし。 「うん。あ」 今度は何? カナさんがブラウスの一番上のボタンを外しかけて止まってる。     
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