さよなら

11/15
595人が本棚に入れています
本棚に追加
/260ページ
「もし、転勤の前に、俺がちゃんと話してたら、 俺たちの運命は違ってたのかな?」 「多分。」 「そっか。 ゲームみたいに、リセットしてやり直せたら、 きっと結は俺のものだったんだね。」 「うん。」 「最後に抱きしめてもいい?」 「うん。」 俺はそっと、結を抱きしめた。 「結が好きだった。」 「うん。」 「結が大好きだった。」 「……… 」 「結さえいれば、何もいらないと思ってた。」 「……… 」 「結、今までありがとう。」 「私こそ、海翔には、たくさん大切にして もらったよ。 幸せな5年間だった。 海翔、ありがとう。」 俺の結。 俺が初めて好きになったひと。 結と一生一緒に生きてくはずだったのに。 俺は結を抱きしめたまま、溢れる涙を止められず、情けないくらい涙を零した。 結から泣き顔を見られないのが、せめてもの救いだった。 俺は腕を緩めると、そのまま背を向けた。 「かっこ悪いとこ、見せたくないから、 このまま行くね。 結の中の俺は、永遠に結の王子様でいたい から。」 「うん。」 「結、さよなら。」 「さよなら、海翔。」 俺は、そのままドアを開けて、部屋を出た。
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!