二十歳の札幌

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 札幌大通り公園は、碁盤の目状になった札幌の街の中心街を一丁目から十三丁目までという長さで横切る公園だ。 さっぽろテレビ塔がある一丁目から二丁目、三丁目……と歩いて行くと、外れに近づく十丁目辺りから街の喧騒が薄れ始め、すれ違う人の数が減ってくる。  ライラック祭りが開催される今月末には端まで賑やかになるのだろうけれど、今はまだ、公園は普段の姿を見せてくれていた。  今日は特に人が少ない。すれ違う人も皆足早に公園を通過する。五月とは言え北海道はまだ、やっと春を迎えたばかり。ひとたび雨でも降れば気温はぐんと下がるのだ。誰もが凍えそうな雨から逃れるように帰途に着いていた。  そんな中、すれ違いざま、わたしの姿を訝し気に見ていく人が幾人かいた。それもその筈。冷たい雨が降る中わざわざ傘も差さずに濡れて歩く女、怪しく見えるのは当然。
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