十三年後のマイバウム1

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 どんな皮肉を言われようとも今は下手(したて)に出ておかないとこの先、生徒を回してもらえない、なんてことになりかねない。こんなところで飼い殺しとか、シャレにならない。  ふうっと息を吐いて、わたしは「よろしくお願いします」と頭を下げた。彼女は。 「分かればよろしい」  短い一言が、ピリピリ空気をふわっと解いた。  分かってる。この女性事務員兼、わたしの上司、鳴海真紀子さんが、飼い殺しなんて非情なことはしないってこと。分かっているんだけどね。たまにドン引きするような言動をぶつけてくるからカリカリさせられるんだ。  この皮肉屋上司は、路頭に迷っていたわたしを拾ってくれた大恩人だ。高校の先輩でもある彼女にわたしは頭上がらない。それを分かっていて、彼女はわたしを突(つつ)いてくる。
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