十三年後のマイバウム2

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 教室の入っているビルを出ようとした時、中から声が掛かった。 「春樹先生! 傘忘れてますよー!」 「あ、いけない、ありがとう!」  同じ先生仲間の女の子が追いかけて持って来てくれた紺色の傘をわたしは受け取る。 「春樹先生、物持ちがいいんですね」 「え?」  わたしが受け取った傘を見つめる彼女は言う。 「凄くいい傘みたいですけど、結構年季が入っているみたい」  そうね、とわたしは笑った。  木製の柄の部分は長年使った証とも言える艶が出、濃紺のしまったボディは杖のようにスッとしていたが、経年の劣化は否めなかった。でも、この傘は手放せない。失くすなんて以ての外。
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