十三年後のマイバウム2

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 大通りのまるいさんに寄って、地下鉄に乗ろうと思ったけれど、今日は真っすぐ帰る気になれなくて、大通公園を十一丁目まで歩くことにした。  九丁目辺りでポツポツと雨が降り始めた。でも、まだ傘を差すほどでもないな、と思ってそのまま大通り公園を歩いて行く。  十一丁目に近づくと、マイバウムのモニュメントが静か佇む姿が見えてきた。カラフルなマイバウムは夕暮れ時の曇天の空に向かって聳えていた。  傍に行こうと歩を進めた時、少し雨が強くなった。わたしは手に持っていた紺色の傘を開いて、差した。  傘を開くと、つい今しがた聞いたようにわたしの中に蘇る声がある。 『十年後の今日、ここで――』  嘘ばっかり。あれからもう、十三年も経ってしまった。日付だって、五月だった事は覚えているけれど、何日だったかなんて、忘れてしまった。
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