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開店の準備にスタッフが慌ただしく動き回る夕刻の店内で、わたしは邪魔をしないよう、テーブルの間を縫って歩いてカウンターの方へ行き、中で生ビールのサーバーのセットに余念のないオーナーに挨拶をする。
「店長サーン」
ここに来た当初からオーナの事は〝店長サン〟と呼んでいる。
店長サンは、この店のオーナーでありながら毎日ちゃんと店に出て、スタッフと一緒になってお酒の準備から接客等々なんでもする。
しっかりと現場を取り仕切り、現場単位で責任者として働くその姿は、正真正銘の店長さんは、〝オーナー〟なんて呼ぶより〝店長サン〟の方がしっくりくる。
「おはようございます。今夜はどうしますか?」
これは今夜のプログラムの相談。ピアニスト、と言ったって、雇われの身。当然好きなものを弾けるわけではない。お店側の要望に応じて、様々なものを弾き分けなければいけない。
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