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ビールサーバーのセッティングを終えた店長サンは、「よしっ」と顔を上げた。口ひげを蓄えた恰幅のいいオジサンがわたしの顔を見てニコッと笑った。
「今夜は特にこれといったお客さんの来店予定もないから、咲希ちゃんの好きなプログラムで通しちゃっていいよ」
「やった!」
思わず、小躍りしたくなるくらいの気持ちでわたしはカウンターに身を乗り出した。店長サンはそんなわたしを見てハハハと笑った。
「いいよ。ただし、ムード壊さない程度にね。ショパンの革命のエチュードとかみたいな激しいのはやめてね」
わたしもアハハと笑う。
「ショパンはドイツ人じゃないからね、って先月店長サンに釘刺されましたもんね。ウェーバーの魔弾の射手とか、雰囲気的にどうですか」
「ああ、それはいいね」
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