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訳あって、人脈を失ったわたしが探してきたのは、このビアホールがピアニストの求人だった。一も二もなく押しかけて自分を売り込んだわたしに、当時の店長サンは酷く冷たかった。
『留学半年だけで、芸大は中退? そんなんじゃ、雇えないよ』
あからさまに迷惑そうな態度で追い返しにかかった店長サンにわたしは「なんでもします」と食い下がった。
お店の掃除だって、必要となれば時には配膳だってする、って。必死だったのだ。〝弾ける場所〟を確保する為に。
人前で演奏してナンボの世界なの。その機会を奪われたプレイヤーはもはや、生ける屍。
弾ける場所さえあるのなら、チャンスは自ずと見つかる。そう信じていたから。
店長サンは当初の話しを、たまにして笑う。
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