二十歳のミュンヘン

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 二十歳そこそこのうら若き乙女にとって、遊びたい盛りの少々やんちゃな少年にピアノを教えるというミッションは、 「また逃げた……」  もはや苦行だ。  グランドピアノの蓋に、書置きのようなメモが置かれていた。 「『先生、ふた、開けてみて』……?」  ため息混じりにメモを手に取ったわたしは蓋を開けて絶句した。  八十八鍵ある鍵盤の真ん中あたりの白鍵部分に、黒いペンで落書きされていた。 『ばーか』
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