ビアホール〝マイスター〟2

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 一口呑んで、ぷはーっ、と言ったわたしに店長サンは言う。 「おつかれ。今夜はいいお客さんだったね。相乗効果かな。今夜のピアノの音はいつにも増して良かったよ」  店長サンは平素、めったに褒めない。こんな風に言われると、どこかくすぐったい。わたしは肩を竦めた。 「店長サンがそんな風に褒めると、今夜はこれから雪が降るかもしれない」 「雪か。札幌だったら五月に雪もそんなに珍しくはないな」  カウンターの端で、プッと吹き出す声がして、わたしはそちらを向いた。 「あ」  思わず、間抜けな声を上げてしまった。 「あなたは……」 「俺の言った通りだったろ」
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