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「咲希ちゃん、そのビールはアオ君からだよ」
「えっ」
彼は、フッと肩を竦めた。
「先月始めの、ちょうど今日と同じ月曜日だった。知り合いに連れられてここに来て、ピアノを弾いてるアンタを見つけた」
「先月の始めの、月曜日……」
そうだ、今夜と同じように店長サンがわたしにソロプログラムをさせる日は大抵、今日みたいな月曜日だった。その夜に、ここにいたの? 気付かなかった……。
「あの夜、初めてここに来たアオ君はピアノを弾き始めた咲希ちゃんを見てすぐに僕に名前を聞いてきたんだよ。最初は、なんだナンパなヤツだなって思ったんだけどね」
「ヒドイ言いぐさだな」
〝アオ君〟と呼ばれる彼は、店長サンの冗談めかした言葉に苦笑いをしながらビールを呑み干した。店長サンはハハハと笑いながら、彼の新しいビールを出し、空いたグラスを片付けた。
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