聖なる夜の契約

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聖なる夜の契約

目を覚ますと、枕元に見知らぬ男が立っていた。 真っ白なヒゲをたくわえた初老の男。赤い服に三角帽、肩には白い袋をかついでいる。 サンタだ。 「病院に行くか、行かないか。それが問題だ」 男はそう言うとため息をついた。そしてかついでいた袋を下ろし、こたつの前に座った。 私は枕元に置いてあった眼鏡をかけた。時計を見ると明け方の四時だった。 「どちらさまでしょうか?」 私が()くと、男は疲れた目をこちらに向けた。その瞳には、肉体労働者の哀しみのようなものが色濃く出ていた。 「おお、すまん。私は(あや)しいものではない」 男はそう言うと、タバコを取り出して火をつけた。 「すいません。外で吸ってもらえますか?」 「おお、すまん、すまん」 こたつの上に置きっぱなしだった、ほろ酔い白ぶどうの空き缶で、男はタバコの火を消した。 そして吸い(がら)を缶の中に捨てた。 「昔は駅のホームでタバコを吸っても良かったのにな。今じゃどこもかしこも禁煙だ。時代も変わったもんだ」 「はあ、そうですか」 「小泉だな」 「小泉?」 「ああ」 「元首相ですか? 改革で有名な」 そうだ、と言ってサンタの格好をした初老の男はうなずいた。     
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