聖なる夜の契約

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「私は別にクリスマスを享受なんてしていないんですけど」 「というと?」 「見てもらえばわかると思うんですけど、私はこのワンルームのアパートで一人暮らししてて、彼氏はいません。昨日のイブも一人で過ごしました。一人で部屋にこもってブログの更新しながら、お気に入りのユーチューバーの動画を見て過ごしていました。明日は普通に仕事です。全然クリスマスを享受できていない、アラサーの乙女です」 サンタはゆっくりと二、三度うなずいた。 あなたの気持ちは充分(じゅうぶん)わかる、とでも言うように。 「そうは言ってもね、これは決まっていることなんだよ。一人ひとりに義務が課せられているんだ。書類にサインをしてくれ」 「義務ってなんですか?」 「その書類に書いてあるだろう。これは決まっていることなんだ。サインをしてくれ」 「これってみんな契約しているんですか?」 「当然だ。これは義務なのだから」 「一軒一軒(いっけんいっけん)あなたが回って契約を取りつけているんですか?」 「委託(いたく)を受けたスタッフたちが一軒一軒回っている」 「あなたもそのスタッフの一人?」 「そうだ」 「なんでサンタのコスプレしてるんですか?」 男は肩をすくめた。     
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