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「ほら、ここを見てください。契約書には、以下のものを所有している場合は契約をしなくてはならない、という記述になっています」
サンタは眉間にしわを寄せて契約書をのぞき込んだ。
その表情には動揺の色が見えた。
いける、と私は思った。
「つまり、これらのものを所有していない場合、使用料を払う義務は生じないということなのではないですか?」
「まあ、それはそうだが」
「見てください」
私は自室を見まわした。
「どこにも何もないじゃないですか。ツリーもキャンドルもプレゼントもパートナーも」
「いや、でもまさか、何もないわけじゃないでしょう?」
「ありません。私には何もありません」
「本当に?」
「ない。私には何もない!」
サンタは、信じられない、という表情で白ヒゲを撫でた。
いい歳した乙女が「クリぼっち」であるという事実に心底驚いているようだった。
よし、あともう一押しだ。
「ない! 私には何もない! 私はクリスマスとはまったく関わっていない! クリスマスとは無縁だ!」
「そんな馬鹿な。この時代にまったくクリスマスと関わらない女子なんて……」
「うるさい、黙れ! 悲しくない、私は決して悲しくない! 私は私の生き方を肯定する!」
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