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「チョコレートは好き?」
きょろきょろしているりぃに瑠璃がチョコレートのカンカンを降ってみせる。
「食べたことない」
チョコレートのカンを一瞬見つめて、すぐに目をそらす。
「どうぞ」
瑠璃がカンカンからチョコレートを一つ取り出してりぃの手に持たせる。
「食べていいの?」
りぃが少し驚いた顔をする。
「もちろん、とっても美味しいよ」
瑠璃がにっこり微笑むと少し戸惑った顔をしながら、ゆっくりチョコレートを口に入れる。
「あまい」
りぃのほおが少し緩む。
「美味しい?」
りぃが小さく頷く。
「おねえさんはだあれ?」
少し顔を上げてりぃが聞く。
「聞いてくれてありがとう。私の名前は瑠璃っていうの。ここは私の家。私はずっと一人で暮らしてる。近くのお店で働きながらね」
「なんで一人なの?」
りぃが小さな声でもごもご言う。
「小さい時に事故で両親を亡くしたの。それから施設で育ってね」
「瑠璃おねえさんお父さんとお母さんいないの?」
「そうだね」
瑠璃はチョコレートを一つかじる。
「ねぇ、りぃは天使に会った?」
りぃは首を傾げた。
「わからない。りぃはね、もういらないって車から白くて寒くて誰もいないところに置いていかれたよ。それはね、りぃが悪いからなんだって。りぃがいるとみんなが不幸になるからって」
瑠璃は思わず、小さなりぃを抱きしめた。
「そんなことない。りぃは悪い子じゃないし、りぃがいてもみんな不幸になんてならない」
「なんで泣いてるの?」
りぃは不思議そうに瑠璃を見ていたが、瑠璃の腕の中で少し緊張が溶けているようだった。
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