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窓から差し込む優しい光に導かれるように、りぃを抱きかかえ、瑠璃は星空の下へ出る。
「瑠璃さん、ありがとう。この子はきっと幸せに眠ることができるでしょう」
目の前の天使に瑠璃は頷いて、りぃをそっと天使の腕に預けた。
どこからか、白い雪の森の精たちの美しいメロディーが聞こえてくる。
りぃを優しく両腕に抱えた天使が、どこまでも美しいメロディーを重ねる。
天使とりぃはふわりと舞い、空高くへ登っていく。
「りぃ、幸せな時間を私に、ありがとう」
空を見上げて瑠璃は小さく呟いた。
「瑠璃さん、寒いでしょう、中へお入りなさい」
知らない間に白髪のマスターが隣に立っていた。
「りぃが突然やってきて、始めて一緒に過ごして、70日。ひとりぼっちじゃないって感じたし、幸せも感じた。だけど、りぃが生まれてから70日前まで、どんなふうにいきてきたのか、あの寒い真っ白な世界に捨てられた時、どんな気持ちだったのか、そんなことを思うと、悲しいなんて言葉では片付けられなくて」
瑠璃の目から静かに雫が流れている。
「人間の未熟さゆえ」
「悲しみを癒す白い雪の森がおとぎ話になってくれますように」
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