プロローグ

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白い白い森の奥。 ずっと長い間、誰一人この場所を歩いてはいないのだろう。 どこまでも綺麗に降り積もった雪が、白銀の世界をつくっている。 木々に混ざりのない真っ白な雪が降り積もり、幻想的な雪のオブジェのようだ。 空から小さな要請が舞い降りるように、ふわふわと粉雪が舞い続けている。 カサカサと小さな音が透き通った雪の世界に静かに響く。 その小さな足音はしばらく雪の森を歩いた。 そして、ゆっくりと力尽きたように真っ白な雪の絨毯の上へ、パサっと倒れる。 雪の森は、再びどこまでも静寂な白銀の世界に戻っていた。 静寂に包まれた雪の森に、透き通る小さな歌声が響き渡る。 それはだんだんと大きくなり、さっき足音が途切れたその場所に集まっていく。 小さな小さな雪の森の精たちの歌声は、雪の森を超えて、夜空の星たちにも届いているようだった。 雪の森の精たちの歌声が天に届いた時、白く美しい大きな羽音と精霊たちの歌に答えるように天使の歌声が雪の森に降り注いだ。 美しい白い羽をふわりとさせ、小さな雪の森の精たちの中へ舞い降りる。 悲しそうな顔をした天使が、地面に横たわる小さな少女の体を抱き上げる。 天使の眼から一筋の透明な雫が少女の胸にぽつりと落ちた。
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