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君と幸せの70日
テーブルの上に置かれたホットミルクから白い蒸気が立ち上り、暖炉からはパチパチと暖かい音が聞こえてくる。
「瑠璃さん、片付けご苦労様でした。ホットミルクを入れておきましたので、ひと休み致しましょうか」
クッキーの入った小さなカゴを手に下げた、立ち姿の美しい白髪頭の店のマスターが微笑んで、テーブルの上を丁寧に拭いている真っ直ぐに伸びた髪が綺麗なレディーに声をかける。
「はい、ありがとうございます」
瑠璃は振り返って微笑む。
テーブルが3つとカウンター席があるだけの小さな店。
カウンターの向こうには、ずらりとお酒やジュースの瓶が並んでいる。
「今日も雪は止みそうにありませんね」
白髪のマスターがふわふわと舞い続ける雪を窓越しに優しく見つめていう。
「そうですね。もう足跡も消えてしまったみたい」
扉の外に続く道を見つめながら、どこか寂しそうな目で瑠璃は呟く。
「温かいうちにお上がりなさい」
瑠璃の目を優しく見つめる。
「ありがとうございます」
両手でカップを優しく包み、ふーっと息を吹きかける。
「私、こんな真っ白な雪の降る夜がどうしても寂しく感じるんです。道も家も森も空もみんな真っ白で、そこに悲しすぎて結晶になってしまった雪が深々と降り続くようで。冷たい冷たい白い世界に誰かが一人ぼっちで泣いてる気がするんです。私が一人になったのも、こんな白い雪の日だったからなのかもしれませんが」
白髪のマスターはクッキーを瑠璃に進めながら、ゆっくり口を開く。
「白い雪の森のお話をしましょうか」
そう言って白髪のマスターは語り始めた。
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