ジョギング

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(はな)大丈夫か?ゴールはもう少しだぞ。 頑張れ」 僕は公園のジョギングコースのゴール地点にいる。 頭上に太陽があり、そこから射す光を 邪魔するものはない。 小さな湖が50m先にあり、水面に反射で 空を映し出しているように見える。 日差し木々の隙間から爽やかな風が流れる。 僕は振り替えり、もう一度、同じことを叫ぶ。 遠く、僕が立っている20m手間。 山本(やまもと)(はな)が手を振るのが見えた。 華の姿はオークリーのサングラス、プーマの薄いグリーンのスウェット、ナイロンジャージ下に着ていて、ピンク色のシューズだ。 彼女がゆっくり近づいてくる。 彼女の美しいフォームにうっとりしそうだ。 「はぁ、はあ。(ゆう)ちゃんはさすが早いわね~」 「あと少しだぞ。頑張れ」 華はマラソンコースのゴール地点に 辿りつくと木々の間をゆっくりに歩き始めた。 ゆっくり歩きながら激しい呼吸が元に戻るようにしている。表情は苦しそうながら笑顔だ。 僕は彼女の手を繋いで空に押し上げた。 「それにしてもいい天気だぞ。見てみろよ」 華は顔を上げる。 「本当。気持ちいいわ」 この場所からこの街を見渡せる。 特に晴れた日は遠い隣町まで見える。 僕は華とよくこの湖がある公園に来る。 この場所に来ると今、悩んでいることがちっぽけなことだと思えてくる。 そんな気にさせる場所。 どちらかがジョギングしようと言うとお互いに通じ会える場所がこの公園だ。 彼女はゆっくり息を整え終わり、ベンチに 腰掛けている。 彼女の体型は細くて肉付きはスマートだ。 僕は隣に座る。 「さあ、帰りもこのペースで走っていくぞ」 「まぁ、ちょっとは手加減してよね」 僕らはジョギングコースを隣同士で並走する。 周りも同じように走るランナーとすれ違う。 横を走る華を見ると目が合い、口元が緩んだ。 彼女と並走して嬉しくなる。 交際3年目。 同い年の27才。 職場で知り合った。 仕事の相談をしているうちに徐々に仲良くなって気付いたら付き合い始め、今は同棲している。 お互いジョギングが好きだったので交際後も一緒に続けることが出来て良かったと思う。 僕は自宅にたどり着いてドアを開ける。 彼女を迎え入れた。 「いや~疲れた。でもこの疲れは本当に心地よい疲れというか、癒やされるね」 「本当ね。やっぱりジョギングは最高ね」
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