5. 3日だけ

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5. 3日だけ

彼女の目は遠くを見つめていた。 僕はなんと彼女に声を掛けていいかわからず、沈黙が続いた。すると、彼女が 「こんな暗い話、長々とごめんなさい。」 と言ったので、僕は 「違います!」 とすぐに答えた。 「僕が次はあなたにいろんなことたくさん話します!だから、だから、だから、もう悲しい顔しないでください。」 彼女は少し驚き、顔の表情が揺らいだ。予想外の返答だったのだろうか。僕は彼女の前に今度は体育座りをし、こう言った。 「これからは僕とこうやってお話しましょ」 と答えた。 「はい、でも、3日でいいんです。あなたが見つけられない3日間だけ、私とお話してください。」 「そうですね…。じゃあ、残りの3日間、沢山話しましょう。」 僕はニッコリと微笑み、話し始めた。 僕は決して話が上手な訳でもないし、面白いオチとはいえないけど、彼女はどんな話も笑いながら聞いてくれた。 「僕は昔ヒーローになりたかったんです。今としては恥ずかしいこと大きな声で言ってたなぁと思いますけどね。」 彼女はその時だけ、ハッキリと僕の目を見つめて笑いかけながら、こうこたえてくれた。 「あなたは私のヒーローですよ」 その言葉は僕の心を響かせた。いつの間にか、もう三日目の夜だった。僕はずっと話していたようだ。優しくて温かい彼女がずっと聞いてくれていたから。彼女は僕にこう言った。 「そろそろ時間ですね。あなたと喋った三日間とても楽しかったです。あなたにとっては辛い時間だったと思いますが、私はとっても幸せでした。」 僕は急に立ち上がり、叫ぶようにこう答えた。 「僕にとってあなたと話せた時間は辛い時間なんかではなく、幸せな時間でしたよ!僕はまだあなたと話していたいです…!」 僕は彼女に抱きつこうとした。抱きついたはずだったのに、そこには彼女はいなかった。 「あなたうるさいですよっ!」 道路沿いの家の窓からそう怒られた。僕の声はいつの間にか周りに届くようになっていた。でも、それ以上に彼女を見つけられないことに悲しくて仕方がなかった。 僕は4日ぶりに家へ戻った。僕はまた会えることを願いながら、眠りについた。3日ぶりに朝ごはんを食べ、身支度をして、大学へ向かった。 僕は彼女が出来ないことをこれから沢山する。彼女に会ったときに沢山話すために。 彼女に幸せを沢山与えられる僕になるために。
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