1 俺はこいつの奴隷だよ

2/6
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
 ご主人様の機嫌を損ねるのは奴隷の仕事じゃない。  それに王子が機嫌を悪くして彼に仕えることが出来なくなったら、と思うと勝とうなどという気は1秒たりとも湧いては来なかった。  俺はローリエが新しい技を自慢したいということが十分わかっていた。  少しおべっかでも言っておこう。 「旦那様の剣技があれば、例え相手がどんなに恐ろしい獣であろうと敵いません」 「そうか……剣闘士ギガノトスでもか?」  王子は少し考えた後、照れを隠すかのように闘技場で最強の男の名前を出してきた。 「左様でございます」 「ははっ、いくら私でも奴は無理だ。闘技会で2匹のトラ相手に素手で勝ったそうじゃないか。しかも意識を失った状態でトラの首を噛みちぎったとか。奴は本物の野獣さ」 「今は難しくとも、旦那様ならいずれ奴にも敵いましょう」 「私にできるというのなら、その私と渡り合うお前でもやれるだろう。奴を呼んでみるか?奴を倒せばお前も市民権を得られるぞ」  ローリエは、俺が褒めすぎたせいか皮肉交じりに聞いてきた。  ギガノトスをここに呼ぶのはまずい。奴はきっと王子を殺してしまう。  確かに、闘技場で最強と認められれば市民権を得られるかもしれないが  噂を聞く限り、一対一で奴に敵う人間はいないだろう。     
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!