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1 俺はこいつの奴隷だよ
「ハァ……ハァ……ブラン、お前もやるようになったな」
俺の前でダラダラと汗を流しながら木刀を構えている男はローリエ・トリケラトプス。
この国を治めているトリケラトプス家の王子だ。
そして俺が奴隷として人生を捧げてきた男でもある。
「旦那様に随分と鍛えられましたからねっ」
ご丁寧に汗を拭おうとする王子の隙をつき、胸元に木刀を突き立てる。
「ハハッ……今のはずるいぞ」
ローリエは剣身を転がるようにして避け、俺の胸元に木刀を突き返してきた。
「グッ……」
俺は気づいたら数メートル吹っ飛ばされて地面に叩きつけられていた。
ローリエの戦う姿を見ていた女性たちの黄色い声が遠くから聞こえてくる。
飛んできた汗が光に当たってキラキラしてらぁ……
俺はやられる時、そんなことを考えていた。
「どうだ、今のは見切れなかっただろ?これはブラッキオが教えてくれた技なんだ」
「はい」
いや、実際は避けようと思えば避けられた。ローリエには将軍ほど技の切れが無い。
……でもいいんだ。
俺にはあの時点で避ける気なんて無かった。
もし俺が勝っちまったら、王子は機嫌を悪くするかもしれねえ……
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