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善の部屋に戻ってキジトラと猫じゃらしで遊んでいると
善が帰って来た。
『お帰りっ』
『帰ってたんですか。』
ちらりとこっちを見て、ネクタイを緩めた。
『舜がありがとーだって。またお願いしてもいい?』
『まさか。2度とごめんですね。』
そう言っといて、結局その後5回くらい
勉強会に付き合ってくれた。
いよいよ来週からテスト。
『あー、来週から学校かぁ……』
一応テスト範囲を読みながらソファにゴロゴロしながら呟いた。
別室でテストを受けて、夏休み明けから普通に登校しようかと柴田先生は言ってくれたけど
美知子も私もテストから普通でいいと答えた。
『私達、何も悪いことしてないし。
夏休み明けだと逆に不自然だよ。』
美知子は気丈に柴田先生に言った。
『初日の教科は?』
お風呂あがりの善はホカホカと湯気が出ていた。
善が暖まっていると言うよりは、この部屋が寒い。
『英語と生物。風邪引くよ?冷房強くない?』
リモコンを見ると19度。
『信じらんない。せめて24度でしょ!』
あわてて温度を上げた。
『英語と生物か。まぁ、50点位は取れるかな。』
『面倒臭いとか言ってもちゃんと気にしてるんだね。』
『………言っときますけど、ちゃんと報酬貰いますよ』
冷蔵庫から水を取り出して蓋を開けながら淡々と言った。
『え!嘘!』
『120分×5日だから3万ってとこですかね?』
『え、時給高っ!』
『これでも格安ですよ。』
『………もう絶対頼まない!』
『嘘ですよ。慈善事業って事にしときますか。』
最近、善はよく笑ってくれるなぁ。
善はペットボトルを片手に、パソコンの前に座った。
『ねぇ、善。』
『はい?』
振り向かずに返事だけ返ってきた。
『夏休み、どっか行こ?』
『………………………』
やっぱダメかぁ。
再びソファに寝転んだ。
『テスト、全部満点取ったらね。』
『!本当!?』
思わず起き上がって善を見た。
『どこに行きたいんですか?』
善は横目でこっちを見た。
『か、考えとく!
ちょっと今から話しかけないで!』
この土日、人生で初めて猛勉強した。
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