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『康隆さん……』
まだ1年だもんな……
小春さんが死んで。
普段平気そうにしててもやっぱり辛いよな。
『まぁ、なっちゃんには舜も居るし!大丈夫か。』
重い雰囲気を払拭するように、笑顔で顔を上げた。
『あ、丁度良かった。ここ、分かんなくて。』
『どれどれ、あぁここは……』
康隆さんの説明はやっぱり分かりやすい。
………菅原よりも。
『あ、分かりました!』
『舜は基礎がよく理解できてるから応用も数こなせば全部解けるよ。次はこれ解いてみようか。』
俺達が数学に熱中してると母さんが戻って来た。
『あら、また勉強?』
『舜、よく勉強してますね。前は図形とか苦手だったのに。』
『ここ数日よ。勉強し始めたの。あの人のお陰ね。』
『あの人?』
『なんて名前だっけ?スギサワ……じゃなくて……
なんだっけ、舜~』
母さんが一生懸命思い出そうとしている。
『菅原。』
『あ、そうそう!菅原さん。
あの人もなかなかのイケメンだよねぇ。』
『え、どこが?なんか暗くね?』
『影があるって言うのよ!ガキには分かんないか。』
『どうみても、康隆さんの方が格好いいし。』
『はいはい。あんたは昔っからやっちゃん大好きよね……………やっちゃん?どうかした?』
康隆さんは心なしか表情が強ばった。
『その人、下の名前知ってる?』
『えっと……確かなつめはゼンって呼んでたかな。』
『菅原……善…』
『あら、やっちゃん、まさか知り合い?』
『舜、なっちゃんは菅原を知ってるんだ?』
母さんの質問を珍しくスルーして、康隆さんは俺に聞いた。
『知ってるも何も、今あいつの部屋に住んでんだよ。
なつめは。』
康隆さんは持っていた教科書を床に落とした。
『康隆さん?』
『あ、ごめん。………舜、なっちゃんに会ったら
話したいことあるって伝えてくれないか?』
『いいけど………』
『ありがとう。』
俺達はまた勉強に戻った。
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