ごほうび

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事務所の傘立てに紅子さんが紫色の傘を入れた。 『梅雨明け、まだかしらね。嫌になっちゃう。』 『あ、紅子さん。お帰りなさい!』 紅子さんの真っ黒な髪の毛が少し濡れていて、襟足の毛が首に張り付いているのがなんとなく色っぽい。 『今日は銀次だけ?善は?』 『さぁ?今日はなんか休みを取ってますけど。』 『ふぅん?そういえば最近なつめちゃんも見ないわね』 『テスト勉強らしいっすよ?』 『あぁ。そうね。あの子高校生だもんね。』 妙に納得したように言うと、席に座った。 『なんか全教科100点取ったら善さんとデートするとか言って頑張ってるっぽいっすよ?』 『なにそれ!面白い!』 紅子さんは、クスクスと口を隠して笑った。 『善さんなんか変わりましたよね~。 復帰直後はまじでサイコ野郎って感じでしたけど。』 『そうねぇ。なつめちゃんの影響かしらね。 ミイラ取りがミイラに………なんてね。』 『?紅子さん、それってどういう……』 『ねぇ銀次、賭けをしない?』 『賭け?』 紅子さんは煙草を取り出して火をつけた。 ふぅ、と煙を吐くと 『なつめちゃんが殺されないでここを出ていけるかどうか。』 『……………紅子さんはどっちに賭けますか?』 『そうねぇ……』 煙を見ながらうっとりと考えている。 このまま、善さんとなつめちゃんはいい感じで居てくれればいいと思ってたんだけどなぁ。
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